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最新作『A New Tide』を2009年8月にリリースしたばかりの英国5人組バンド、ゴメス(Gomez)。1998年、ブリット・ポップブームの終焉とともに登場した若き5人組が打ち出す、あまりに円熟したサウンドに英国音楽シーンは沸いた。

「好きなことを仕事にすることはお薦めできない。」

私が若い頃に人生の先輩である大人たちによく言われた言葉である。
当時の私は、憧れのロックスターのように反抗心を行動で示すような勇気もなく、その言葉の本当の意味も分からないままに、心の中で静かに大人への反抗心を燃え上がらせたものである。今ならば、少しはその意味も理解できるようになったのだけれど。

今回紹介するバンド「ゴメス(Gomez)」のサウンドを聴くと、本当に音楽が大好きで仕事にしてしまったのではないかと、私は感じずにはいられない。フォーク、ブルース、ジャズ、サイケ・・・純粋な音楽好きの5人組が「自分達の好きな音楽を、自分たちのサウンドで表現する」という、シンプルなスタンスをずっと頑固に守り続けている稀有な存在である。

カテゴライズ不能なサウンド

ゴメスは、イギリスのサウスポート出身の5人組のバンドで、いわゆるブリティッシュロックにカテゴライズされて紹介されることが多いが、フォーク、ブルース、カントリー、サイケ・・・様々な音楽を昇華して作り上げる独自の音楽性は、ブリティッシュロックという枠では語りきれない。
ゴメスには3人ものボーカルが存在し、曲によってメインボーカルが変わる。(私はベン・オッターウェル(BEN OTTEWELL)のしゃがれたボーカルが一番好みだけど。)しかし、誰がボーカルを執っても「ゴメス・サウンド」という核が真ん中にあるため、どの曲のサウンドから受ける印象は統一されている。何よりも、音楽そのものへの前向きな姿勢で、次々と「実験的なサウンド」(実験的に聞こえないところがゴメスの良いところなんだけど。)と、「通好みだけどキャッチーなサウンド」をバランス良く生み出し続けている。

ゴメスの略歴

ゴメスは、1998年にデビュー作『Bring It On』をリリースし、このアルバムは、英国のマーキュリー・プライズをはじめとする様々な賞を独占した。国内も25万枚以上のセールを記録することとなり、順風満帆のスタートとなった。が、そのサウンド性からか本国イギリスではデビュー作以降は、コンスタントにアルバムをリリースするものの、コアなファンは獲得しつつもビッグセールスにも恵まれず、2002年以降はアメリカに活動の拠点を置くようになる。

アメリカに渡ったゴメスは、アメリカで絶大なジャムバンドとして人気を確立した「デーヴ・マシューズ・バンド(Dave Matthews Band)」のレーベル「ATO」に所属し、ジャム・バンド・シーンに急接近を試みる。本来の音楽性を十分に活かせる土俵を得たゴメスは、水を得た魚のように、再びシーンからの注目を集めることとなる。現在では「Bonnaroo Music Festival」の常連として名を連ねている。

ゴメスとの最初の出会い

gomez_liquidskin.gif
さて、私がゴメスを始めて知ったのは、そのデビューアルバム『Bring It On』の秀逸なジャケットワークがきっかけだった。(後に調べて分かったのだがこのジャケットワークは、レジー・ペドロ(Reggie Pedro)というイラストレーターの作品であった。)

レコードショップで待ち合わせの時間つぶしをしていて、そのアルバムのジャケットーワークの独特なテイストに強く心惹かれたことを覚えている。他のアルバムジャケットも見てみると、セカンドアルバム『Liquid Skin』も同じイラストレーターが起用されていた。

(当時の私はゴメスというバンドのサウンドを全く知らなかったが)この2枚のアルバムを購入することを決めたのだった。世に言う「ジャケ買い」である。

『Bring It On』のサウンド

そして帰宅後、特に期待することもなく、せっかく購入したので『Bring It On』を聴いてみた。
スピーカーから流れてくる音楽に耳を傾けてみると、サウンドには派手さもないし、ボーカルの声質も(少しトム・ウェイツをほうふつとさせる)渋さは好みだったが、いわゆる「売れ線」ではない。だけど、1曲1曲に妙に心に引っかかる何かがあった。それは言葉ではうまく表現できないフィーリングだった。そして傍らにあったアルバムジャケットが目に入った瞬間に私は全てを理解した。

そうか、このサウンドこそジャケットワークを見た時に感じたフィーリングそのものではないか。

アタマを後ろから殴られたようなガツンという感動もあるけれど、ジワッと染み込んでくるような感動もあるのだと、当時の私は思ったものだった。前者の感動は、最後にはどこかで置き去りにされてしまうことが多いけれど、後者はずっと忘れられない心象風景を残す。

ゴメスを最初に知ってから10年近く経つ現在でも、少し肌寒いこの季節になると『Bring It On』を聴く。10年前の自分が考えていたことや抱えていた問題、そんなものがふっと心に湧き上がっては消えていく。そんな少しビターな時間を楽しむためには『Bring It On』はうってつけだ。

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[Gomez Official Site]
http://www.gomeztheband.com/

[Reggie Pedro Official Site]
http://www.reggiepedro.com/

このアルバムのテイスト   HOT  ,  RELAX
Gomez / Bring It On
タイトル : Bring It On
アーティスト : Gomez
レーベル : Virgin
録音年月日 : 1998/5
収録曲
1. Get Miles
2. Whippin' Piccadilly
3. Make No Sound
4. 78 Stone Wobble
5. Tijuana Lady
6. Here Comes the Breeze
7. Love Is Better Than a Warm Trombone
8. Get Myself Arrested
9. Free to Run
10. Bubble Gum Years
参加アーティスト
BEN OTTEWELL
(Vocal, Guitar, Bass, Charango, Synths )
TOM GRAY
(Vocal, Guitar, Bass, Keyboards, Percussion )
IAN BALL
(Vocal, Guitar, Keyboard, Percussion, Bass, Harmonica, Drums )
BLACKIE
(Vocal, Guitar, Synthesizer, Accordian )
OLLY PEACOCK
(Drums, Percussion, Synthesizer, Bass )
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